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2018年入賞作品

「JID AWARD 2018」は、2018年3月~5月の間、公式ウェブサイトで公募を行った。応募条件をクリアした1 3 9点を審査対象とし、ウェブ上に登録された資料に基づいて第1次第2次の審査を行い、現地審査や現物審査を行う第3 次審査を経てゲスト審査委員の参加を得た最終審査で、大賞1 点、インテリアスペース部門賞3 点・入選5 点、インテリアプロダクト部門賞3 点・入選2 点、NEXTAGE 部門賞10 点の作品を選出した。受賞作品は、公式ウェブサイトで発表するとともに、受賞作品展でパネルによる展示が行われる。

大賞 Grand Prix

能作本社

能作
アーキヴィジョン広谷スタジオ 水野図案室
Koizumi Studio t.c.k.w

[審査講評]
江戸時代以来の職人技を基本に現代生活に向けた多様な銅合金鋳物を生産・販売する企業が、本社オフィス、工場、売店、製品使用のカフェ、観光案内スペースを一体化して新設した施設。内部を巡ると、繊細かつ大胆なデザインが心地よい。また、この企業の扱う製品の素材や生産工程に関する説明が巧みな演出で示されており、飽きさせない。企業トップが、計画の出発段階から竣工後の今に至るまで、プランナー、建築家、家具デザイナー、グラフィックデザイナーからなるチームと頻繁にミーティングを重ねて来たとのことだが、デザインや運営などソフト面までを含む総合的な魅力は、まさにその成果と言えるだろう。(清水忠男)

インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize

立体庭居

井川 充司(株式会社IKAWAYA 建築設計)
ZAE Japan 株式会社

[審査講評]
エントランスの手水鉢を観ながら階段を上がる と突然小川が流れる庭が現れる、南北方向に広 がる庭は東に外壁と一体化した石の壁、西側は 全てガラスで室内につながる、つまり外部に居 ながら既にリビングを含む内部空間の全貌が見 えてくる、改めて室内側から観ると庭と見事に 一体化した広がりがなんとも気持ちよく居心地 が良い、素材もディテールもさりげなく詰めら れている。3 階のバスルーム、屋上にもそれぞ れ庭が用意されているがこの空間の全てをあら わしているのが2 階に展開するドラマチックな 空間であろう。まさしく庭居である。(近藤康夫)

インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize

Seven Gardens House

井川 充司(株式会社IKAWAYA 建築設計)

[審査講評]
敷地を生かし、どの部屋からも庭の緑や四季 折々の花を楽しめる心地よい住宅である。住み 手と設計者の入念なコミュニケーションが創り 出した落ち着きのある住空間といえる。インテ リアの細かな部分は未完成ながらも基本的な空 間はチーク材と漆喰の白のコントラストで美し く仕上げられているので住み手の感性で徐々に 仕上げられていく楽しさを感じる。住み手の知 性により完成する今後が楽しみな住宅デザイン である。 (川上玲子)

インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize

TWILIGHT EXPRESS 瑞風

西日本旅客鉄道株式会社
浦 一也(浦一也デザイン研究室)
戸井 賢一郎、谷垣 浩一、今井 充彦
(株式会社日建スペースデザイン)
福田 晢夫(A&F 株式会社)

[審査講評]
「美しい日本をホテルが走る~上質さの中に 懐かしさを」のコンセプトを確実にデザイン している。デザインソースを内外共にアール デコ調で一貫し、「懐かしさ」を醸しだして良 い。大理石、ファブリックス、沿線の県産木材、 又、食器、テーブル備品、アートワークも「上 質」のものが良く厳選されている。それらを 構成したインテリアは「上質」の空間となっ ていて心地良い。景色を楽しめる大開口の窓 と開口可能の小窓も備えていて、風や空気を 感じさせる五感のデザインとなっている。窓 計画、照明計画は、昼夜の光環境を充分に演 出している。列車のデザインとして秀逸である。                (小宮容一)


インテリアプロダクト賞 Interior Product Prize

舎庫

一般社団法人わざわ座
小泉 誠(Koizumi Studio)

[審査講評]
パネル工法化された10 平米以下のセカンドプレ イスの提案は設置場所を選ばないシンプルな工 法、構造と一体化した杉材による美しい内部の 仕上げ、車一台にみたてたコストなどプロダク ト化された身近な環境造りが実現されている。 とかく標準化されたデザインは退屈な表情を持 つものが多い中、住居、茶室、アトリエなど様々 な用途に対応している事に驚かされる、2015 年度JID インテリアプロダクト賞を既に受賞し ているが、さらなる進化を遂げたデザインとし て改めて評価するものである。(近藤康夫)

インテリアプロダクト賞 Interior Product Prize

川越氷川神社の折り畳み式屋台

小泉 誠(Koizumi Studio)

[審査講評]
「屋台」の檜材と布の組合せは、いかにも神社 にふさわしい組合せである。折り畳みの構造・ 構成もうまく、軽快にまとまっていて、「凛と した空気を醸し出す」又、「巫女ひとりで折り 畳め運べる」の、コンセプトに答えたデザイン となっている。同檜材を使った「スタッキング ゴミ袋スタンド」も良い。又、木質系白木でま とめた「カフェ」も神社にふさわしいできと思 われる。スチール製の「サインスタンド」「傘 立て」は、デザイナーの「気」が一貫していて、 その造形に好感が持てる。単品だけでなく総合 で評価した。(小宮容一)

インテリアプロダクト賞 Interior Product Prize

布框戸

藤田 雄介(Camp Design inc.)

[審査講評]
框戸は通常木製の框の間に板やガラスをはめ込 む形だが、ここに簡易な方法で布を張ることが できる布框戸は今までにありそうでなかった新 しい建具の形を提案している。リノベーション に対応しているということで従来の襖、障子を これに変更することが可能な商品。框戸を額縁 に捉え多様なアレンジで個人の楽しみを生み出 すプロダクトである。(木辺智子)

NEXTAGE部門賞 NEXTAGE Award

部門賞+成瀬友梨
内なる風景 -空白を訪ねる-

易 雅静

[審査講評]
ここに素足で降り立ち、しばらく座ってみたいと思いました。やっている ことは至ってシンプル。緩衝材のミラマットを断面が見えるようにひたす ら並べて重ねているだけ。結果月面のクレーターのような地形を作り、部 材の形状にノイズを入れることで肌理が生まれている。ここで静かにお茶 を飲めば、宇宙を感じられるかもしれない。その世界観に惹かれました。 (成瀬友梨)

 部門賞+猪熊純賞
LIVEL シングルライフを支えるシェアーファニチャー

松浦 克彦
協力:金沢美術工芸大学、鳴和プラスチック

[審査講評]
物を持たない時代に、デザインに何ができるか、ということを問いかける 興味深い提案だったと思います。単なる仕組みの話ではなく、レンタルだ からこそ必要になる軽さ・コンパクトさ丈夫さに対して、丁寧に検討を重 ねていることに好感を持てました。とはいえ実際には徐々に劣化すること や、長く借りていると購入した方が安くなってしまうことが想定されるの で、実現するにはさらなるアイディアが必要そうですね。(猪熊純)

 部門賞
SCARF CHAIR

守本 悠一郎( デザインファーム eau)

TOUR

山下 麻子、山中 コ~ジ、山中 悠嗣( pivoto)

Between silence and noise

田口 愛、木村 優介、宮沢 優夫
(愛知工業大学 建設システム学科 安井研究室)
協力:愛知建築士会 学生コンペ委員

MAYU

青山 友海( 九州大学 芸術工学部 工業設計学科)

旅するランバートレイン -子どもと旅する木の列車-

中尾 雄介( 一級建築士事務所 なかおデザイン室)

kaguya 和室と調和する空気清浄機

清水 佑哉( 株式会社スーパースーパー)

SKEL METAL- nuno

島 あゆみ( イイアンデザイン)

&n STOOL (andon stool)

反甫 心映( 0556style)

インテリアスペース部門入選作品

[審査講評]
今回のスペース部門はいずれもすばらしい作品ばかりで審査員一同意 見も様々。その中でも新しくユニークなコンセプトの作品や小さなス ペースながらも心をひきつけるディテールにこだわった作品、ダイナ ミックに素材を扱った空間構成などインテリアのこだわりが感じられ る作品が入選作品として選出された。写真だけでは解らない現地審査 ならではの肌で感じる空間デザインが高く評価された。 (木辺智子)

HUDSONS

真泉 洋介
(株式会社プラスマイズミアーキテクト)

KOKUYO TOKYO SHOWROOM 2F「DIVERARY」

石井 一東、青木 耕治(コクヨ株式会社)

竹中大工道具館 休憩室

佐藤 達保(株式会社竹中工務店)

パークコート青山 ザ タワー

三井不動産レジデンシャル株式会社
Iconique 特定目的会社
株式会社大林組

MEDI

今福 由起(有限会社ヴォイド)

インテリアプロダクト部門入選作品

[審査講評]
入選の2 点も魅力的である。片や、桐、檜、金銀箔など日本の伝統的 素材やそれらを加工する伝統的職人技と革新的な手法との組み合わせ により生み出された新たな壁装材シリーズを、使いやすいサンプル帖 にまとめたもの。優れたインテリアデザインは、こうした地道な開発 の成果によって支えられる。他方は、3 面だけで構成されたシンプル なスツール。ひっくり返して、3 本の棒材を組み合わせた支持体上に 重ね置けば、場所をとらない収納が可能であり、彫刻的な造形も楽し めそうだ。 (清水忠男)

Art Wall LEGENDⅡ

株式会社トミタ

Tri Stacking Stool

元木 大輔(株式会社DDAA)

2018 JID AWARD 全体講評

選考委員長 米谷 ひろし
(TONERICO:INC.代表、多摩美術大学教授)

「日本のデザインとは何か」といったことを考える機会が増えているように感じます。デザインする上での条件は、いつも違った問題を含んでいます。空間においては敷地や周辺の状況、その場所性などです。空間のみならず、そこに置かれる物にも、ある種の場所性はついてきます。その場所性の根源に「日本のデザイン」といった命題が浮かび上がってきます。大賞の「能作本社」はそういった命題と向き合い、場所との関係性、建築の内と外といった一連の要素が、人と自然を結び付ける素晴らしいデザインでした。入選作品の多くもそういった場所性からくる、自然観や必然性に裏打ちされた良作が多かったことが印象に残っています。

JID 理事長 丹羽 浩之
(有限会社ヴォイド代表)

私ども公益社団法人日本インテリアデザイナー協会(JID)は1958年に活動を開始し、今年で60 周年の節目の年を迎えます。60 周年の記念すべきJID AWARD 2018 は合計139 件の応募をいただき、その中からスペース部門に関しては現地審査、プロダクト部門については実物での最終審査を行いJID AWARDとして相応しい作品を選定させていただきました。JID60 年の活動の中、日本のデザインは経済発展とともに著しく発展成熟して来ましたが、私たちを取り巻く環境の急激な変化が起こっています。日本のインテリアの歩みと共にJID AWARDも社会の動向を写す鏡として、その時代、時代の特徴のある作品が集まり、選ばれて来ました。今年の作品の特徴としては、人の営みの中でデザインが果たす役割を、よりシンプルに捉え、再構築されている気がします。緩やかに個と個が集まり、それらがシナジー的にツナガり、空間が生まれる。新しく、次の時代の未知なる可能性と希望を感じることが出来ました。ご応募いただきました皆さんありがとうございました!

JID AWARD 2018 審査員

ゲスト審査員

成瀬友梨 (成瀬・猪熊建築設計事務所)
猪熊純  (成瀬・猪熊建築設計事務所)

JID選考委員会

岩倉榮利 (岩倉榮利造形開発研究所 代表取締役)
川上玲子 (テキスタイル&インテリアデザイナー)
木辺智子 (インテリアデザイナー、株式会社フォーラム 取締役)
小宮容一 (芦屋大学名誉教授)
近藤康夫 (インテリアデザイナー、東京造形大学特任教授)
清水忠男 (製品・環境デザイナー、金沢美術工芸大学大学院教授)
丹羽浩之 (有限会社ヴォイド代表、JID理事長)
米谷ひろし(TONERICO: INC.代表、多摩美術大学准教授、選考委員長))

JID AWARD 2018 レリーフレット

JID AWARD 2018 レリーフレット PDFファイル