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2006年入賞作品

2006年JID賞ビエンナーレの応募総数は236点。
部門別ではスペース系が177点でプロダクト系の3倍を超えた。

委員会では5回の予備審査とスペース系の現地視察を行い、
最終審査には4名の特別審査員を迎えて投票と審議を行い各賞を決定した。

大賞には応募作品"canvas"が異論なく選ばれるなど35才以下の応募者の健闘が目立ち、
時代の変化を感じさせる審査だった。

大賞 Grand Prix

canvas

佐藤オオキ 石川崇之

(撮影:Kanako Sato)

[審査講評]
とんでもない低予算で、
2階建ての古い家屋を改装してレストランに仕立てる、という難題が、
構造体だけにした内外部を防水性キャンバスで覆い、
端材で家具やメニューまで作ってしまうという思い切った手法によって解決され、
きわめて個性的で居心地のよい空間として実現されている。
サスティナビリティがより重要となる今後のデザインのあり方の先取り。
挑戦的な姿勢と卓越したデザイン力に拍手を送りたい。

インテリアスペース賞 Interior Space Prize

中国木材株式会社 名古屋事業所

福島+冨永建築設計事務所  福島加津也 ・ 冨永祥子
中原建築設計事務所  中原英隆

(撮影:新建築写真部)

[審査講評]
ダイナミックで豊かな事務室の空間が心地よい。
付属する各室の造作・家具・什器に至るまで商品である木材を効果的に用いたインテリアを高く評価したい。コンパクトな建物ではあるが、様々な工夫が施され、造形的にも創造性があり、すぐれた計画である。

成城あんや

TONERICO:INC  君塚 賢

[審査講評]
日本の桐材・土・和紙、ガラス等の素材をバランスよく生かし、
細心なディテールでまとめ、シンプルで美しい空間を構成している。
光と影・水・茶道具を効果的に用い、老舗の品格を新しい形で表現した、
小ぶりながら好感のもてる優れたインテリアデザインである。

王子木材工業本社ビル ─ 木のサンプル帳

MDS一級建築士事務所  川村奈津子 ・ 森 清敏

(撮影:Satoshi Asakawa)

[審査講評]
構造のスチールとサッシによるグリットは単純、
均等の構成がバランスよく、
ペアガラスで囲まれた内部空間はシンプルな木の横桟の間仕切りやフローリングで、全体の構成が素直で豊かな美しさを感じさせる。

インテリアプロダクト賞 Interior Product Prize

obi (spiral-shaped bench)

日原佐知夫

(撮影:TAKAHIRO INOUE & Studio HARADA)

[審査講評]
制作困難と思われる形状を高い完成度で仕上げており、まずそれに驚いた。
トポロジカルなフォルムが印象的なこのベンチは人に作用してそこに座る2人を隔て、次に引き寄せて握手をさせるのだ。

snow

nendo  佐藤オオキ

(撮影:Masayuki Hayash)

[審査講評]
装飾を施して物を際立たせるのではなく、
オーナメントそのものを構造体と融合させているところが絶妙である。
雪の結晶もどきの三次元集合体が織りなす光と影が美しい。

wind

nendo  佐藤オオキ

(撮影:Daici Ano)

[審査講評]
布のようなフォルムにまとめあげたこの作品は、
プライウッドの技術的チャレンジをし、
最小限の構成要素で高度な合板成型技術によって実現した近年、
久しぶりに見る若さあふれる軽やかでとてもシャープなデザインである。

インテリア研究・著作・業績賞 Acknowledged Achievement

井上 昇の椅子塾

井上 昇

(撮影:藤塚光政)

[審査講評]
椅子のデザイン・制作に特化した私塾を開き、少人数制で人間工学から家具の原寸図までを念入りに指導して現物制作を行う。
デザイン関係者だけでなく様々な職業の塾生に対応した指導を、長年続け、150名に及ぶ塾生が巣立った事は評価できる。
単にデザイン指導者にとどまらない先見性と戦略的行動がこれを支えたに違いない。

佳作 インテリアスペース部門  Acknowledged as a Fine Work

Poco a poco

札幌スタイル・デザイン開発プロジェクト  森田敏昭

[審査講評]
製品的には強度やディテールに改良の余地はあるものの、機能一点張りの福祉機器が多い中、使いやすく美しい機器を目指した産・学・官共同開発に依る歩行補助機器プロジェクトが授賞した意義は深い。
社会性のある家具や機器の研究開発に社会の関心が高まり、その一翼をデザインが担えると確信している。

2006年JID賞 全体講評

特別審査員
浅倉与志雄[LIVING design 誌General producer]

今回の審査で印象的であったのは、若手デザイナーの健闘であった。スペース、プロダクト部門とも、若手の作品が実際の商業空間や商品として供されている点がすばらしい。
これら若く有望な感性が生活の現場で発揮されることは、暮らしとデザインの距離を狭めるよい刺激となるだろう。彼らの更なる感性の発現に期待したい。

特別審査員
隈 研吾[建築家]

建築、インテリア、IDというたぐいのデザインの境界が、すでに消失しつつある事が、明らかにされたような、賞の結果であった。
境界の消失は、言葉で主張される以前に、優れた実例によって、明快に、そして軽やかに実現してしまっているのである。
しかもこの消失は、一種の生活の革命をも臭わせる。
CANVASをはじめとするnendoの作品群に、特にその臭いを強く感じた。

大西若人[朝日新聞東京本社 文化部次長]

インテリアとは「内側」。
審査では、しかし、その「内側」にどれだけの「外側」、つまり社会的な広がりや普遍性が存在するかが、ポイントになったと思える。
「CANVAS」なら、布地による空間が、低予算リフォームという社会性と素材の普遍性を備えていたがゆえの、大賞だろう。あまりも多様なデザインの世界で何らかの序列をつけるとき、それが数少ない尺度なのかもしれない、とも思う。
デザインの世界の「外側」にいる一人の記者として。

川上玲子[(社)日本インテリアデザイナー協会 理事長]

今回、JID賞2006からはビエンナーレとなり内容的にも充実した結果を得る事ができました。
応募者も若い人たちからベテランまで広範囲にわたり、日本インテリアデザイナー協会と共に育んできたJID賞の貴重な歴史の結果が現れてきた感があります。
今の時代はデザインもグローバル化し、よいデザインは国を越えて世界の人たちにも愛される要素を求められています。そんな現状の中で今回の受賞作品は、日本人のデザインとして世界に通用する新鮮な感覚を持った作品と言えるでしょう。

2006年JID賞 審査員

特別審査員

浅倉与志雄[LIVING design 誌 General producer]
大西若人[朝日新聞東京本社 文化部次長]
隈 研吾[隈研吾建築都市設計事務所]
川上玲子[(社)日本インテリアデザイナー協会理事長]

JID選考委員会

秋山修治[a Design Associate]
岩倉榮利[岩倉榮利造形開発研究所代表]
木村戦太郎[文化女子大学造形学部住環境学科教授]
吉良ヒロノブ[吉良+DOデザイン研究室]
坂本和正[方圓館館長]
清水忠男[千葉大学工学部デザイン工学科教授]
中川帛子[カスタムアート&デザイナーズ代表]
山本棟子[インテリアデザイナー