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2010年入賞作品

2010年JID賞ビエンナーレの応募総数は217点、前回の応募を30点上回った。
部門別ではスペース系が174点、プロダクト系が41点、研究・著作・著作系は2点に止まった。
スペース系は前回同様に優秀作品が多く選考に苦心したが、
プロダクト系では受賞該当作品がなかった。

委員会では4回の予備審査とスペース系の現地審査を行い、
最終審査には3名の特別審査員を迎え、投票と審議によって各賞を決定した。

大賞には"佐川美術館 樂吉左衞門館"が異議なく選ばれたが、
その評価は各人各様だったため、 現地審査担当委員の講評を列記した。

大賞 Grand Prix

佐川美術館 樂吉左衞門館

樂吉左衞門+内海慎介 竹中工務店大阪本店設計部

(撮影:畠山 崇)

[審査講評A]
琵琶湖を望む自然に恵まれた環境とともに
感性と技術の融合が織りなす日本のインテリアデザインである。
ダイナミックな発想の中に緻密な計算の過程を経て創り上げられた空間、
その内部にまで入り込む水の輝きと自然の光。
インテリアアートのような空間にも関わらず
心地よさと癒しを与える大らかさが感じられた。

[審査講評B]
「設計を僕にさせて下さい」という陶芸家・楽吉左衞門氏自身が放った突拍子もない一言。
それに尽きる。
本人自身による妥協なき理想の追求と本気の熱意のみが成せる創造であり、
また随所に見られる陰影の演出や自然との一体感などすべてに隙がなく、
その素晴らしき感性にも驚かされる。
ものづくりにおける本質に対面し、
楽氏には純粋に感動させて頂いた。

[審査講評C]
利休や織部が茶室を、好きに・めずらしく[数寄に]デザインした様に、
楽吉左衛門氏は思いのままに、渾身の心でデザインしたと思える。
光と影、内と外、素材と素材そして空間量を自在に構成している。
これらの関係を納めるディテールは竹中工務店の技術によって、
素晴らしい効果をもたらしている。
過去を払拭して未来を見据えたインテリアである。

インテリアスペース賞 Interior Space Prize

アルケアふくろうハウス emotional switch

志村美治+井筒英理子 フィールドフォー・デザインオフィス

(撮影:Nakasa & Partners Inc.)

[審査講評]
デザインが、その出発点から、使い手(施主側)との共同により考えぬかれ、
高いレベルのものとして具体化され、
さらに施工後も、そのデザインポリシーが日常的運営の中で徹底されている、
という望ましい例である。

根元 八幡屋礒五郎商店

辻村久信 辻村久信デザイン事務所

(撮影:Nakasa & Partners Inc.)

[審査講評]
蔵をテーマに文化基盤を継承し、現在手法をもって美的に纏まっています。
日本の伝統工芸技法とコンテンポラリーとが融合した美しい空間と云える。
細部に伝統技法を駆使しつつ、
大きな格子行灯が宙に浮いたような構成で大胆な空間となっています。

シネプラザサントムーン Twists ceiling -光と空間に導かれ

滝田智美 フィールドフォー・デザインオフィス

(撮影:Nakasa & Partners Inc.)

[審査講評]
地方都市の典型的なショピングセンター、
その一角を占めた中小の映像施設が集合したシネマコンプレックスである。
娯楽施設の乏しい地方で映画はその中心を担うものであり、
幅広い層の人々に受け入れられるイメージが望まれよう。
潤沢でない予算の中で色彩と照明計画に焦点を絞り、
その操作によって表情豊かな空間を演出し、
映画鑑賞の人々のinとoutの心理を巧みに反映させた
インテリアデザインの手法は評価できる。