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2014年入賞作品

JID 賞ビエンナーレ2014 は、JID 賞の歴史上初めて、公式ウエブサイト上で公募と初期段階審査を行った。応募総数122 点のうち、条件をクリアしていた108 点を審査対象とし、ウエブ上に登録された資料に基づき第1次審査を、また、その通過作品について現地審査、現物審査を伴う第2次審査を行い、その通過作品についてさらに特別審査委員の参加を得た最終審査会にて審査した結果、大賞 1点、インテリアスペースデザイン部門賞3点、インテリアプロダクトデザイン部門賞 2点、学生部門賞 1点、入選7点が選出された。新設されたアイディア部門賞においては、残念ながら入賞・入選の該当作品がなかった。各段階の審査結果は、その都度、公式ウエブサイトにて発表されている。

大賞 Grand Prix

扇屋旅館 扇屋カフェ(新潟県村上市)

大坪 輝史(6D)/安原 幹、日野雅司、栃澤麻利(SALHAUS)/泉井 保盛(+I DESIGN)

(撮影:矢野 紀行)

[審査講評]
古びた村上駅前にあるビジネス旅館にカフェを加え宴会場を含めてフォームした空間。

次の時代につなぐという想いから“ 改修”が選択され、重なる増改築により複雑に入り組み老朽化も激しかった建物を再構成し、
中庭によって各要素をつないでいる。全体のカラーリングを統一し、庭園風中庭を通りに対して開放したこともあって、居心地
の良い空間がかもしだされている。

一気に現代風デザインに突進するのではなく、適度なリノベーションにより、地域とのつながりを活かすというやり方は、地方
に残る古いビジネス旅館のこれからの可能性を示唆しているようだ。

インテリアスペース賞 Interior Space Prize

藤田歯科医院

川西 康之、栗田 祥弘、柳 辰太郎(nextstations)

[審査講評]
駅前ビルの一角、落ち着いた表情の暖簾をくぐると木の香りに包まれる。数多くの
診察・治療ブースの存在がわかる開放的な空間なのに、歯科医院につきものの音も
聞こえない。合板の仕切りや天井を柔らかに構成する幕面の波がリラックスさせて
くれる。神経の行き届いたデザインに感心させられると同時に、広い待ち合い空間
を活かしたイベント開催など、地域とのつながりを意識したインテリアデザインで
あることも高く評価したい。

塩野義製薬 医薬研究センター SPRC4

小梶 吉隆(株式会社 竹中工務店)

[審査講評]
数カ所に分散していた研究所を統合した施設である。ダブルスキンで構成された
ファサードのルーバーモデュールの開口部から、内部空間の回廊へ外光がふんだん
に入り込む。その中央に配置されたガレリアにも天井から光がふりそそぐぎ、打ち
合わせや休憩の場を包み込む。機能上は閉鎖的な施設でありながら、研究者達に
とっては、常にリフレッシュできる明るい「KURASHI」の空間となっているようだ。

 「シキリの形」

 青木 律典(青木律典建築設計スタジオ)

(撮影:石田 篤)

[審査講評]
有効スペースを狭くしながらも、空間を潔く巧く使う手法で広く感じさせるなど、
仕切り方次第で、空間内のそれぞれの関係や距離感が、より生かされるということ
を実感させるデザインである。シンプルなダイニング、機能的なキッチン、ユニー
クなユーティリティー、二人用のワークスペースなど、細部にわたり考えられてお
り、ローコストでありながら大変良く仕上げられており、今後のリノベーションデ
ザインの方向性を感じさせる。

インテリアプロダクト賞 Interior Product Prize

ミニマルな光のリング

小梶 吉隆、塚本 直子(株式会社 竹中工務店)

[審査講評]
金融街のシンボル的存在であった銀行の古典的大空間の保存・再生にあたって、照
明計画が重要な鍵の一つとなった。従来の白熱灯によるスポット照明の代わりに、
大空間に対してのミニマルなリングの中にLED を組込む方式をとって照度向上をは
かるとともに、天井へのアッパーライト機能や机上照度向上のための自動調光シス
テムの導入や地震時の振幅低減対策にも配慮して、古典空間に負けない見事なイン
テリアプロダクトが生まれた。

Kamidana「むく」

水野 憲司(mizmiz design)

[審査講評]
従来の神棚は残念ながら少しづつ姿を消しつつある。それは思想的な問題もあるだ
ろうが、それ以上に、現代的な空間に対して最適なスペースがないとかデザイン的
に不釣り合いになってしまうと感じられているからではないだろうか。この神棚で
は現代的解釈が詳細なところまでバランス良く配慮されている。伝統を現代に繋ぐ
ことは今日的な課題とも言えるが、こういった作品の力に今後も期待したいと思う。

学生部門賞 Student Award

無源のひとかけ

富所 駿(多摩美術大学)

[審査講評]
久しぶりに学生らしい将来性を感じる作品に出会った気がした。未完成の感は免れ
ないが構造とフォルムの研究を進めることにより新鮮で美しいデザインが生まれる
予感がする。第一次審査の段階でどうしても実物を見たい作品であったが、やはり
椅子としては強度的に不安感があり、美しいフォルムを保つことが現段階では難し
いが研究の余地を含んだ感性溢れる、そして今後が期待される作品であると言って
よいだろう。

入選作品

Haco

木下 昌大(KINO architects)

ロイヤルパークホテル ザ 京都

黒柳 亮 (株式会社 竹中工務店)

三井住友銀行 夙川支店

西田 徹太郎、今井 充彦 (日建スペースデザイン)

大阪木材仲買会館

白波瀬 智幸、興津 俊宏 (株式会社 竹中工務店)

Dage | reversi

橋口 新一郎 (橋口建築研究所)

12 / 12 stool

富所 駿 (多摩美術大学 )

Vege-co(ベジコ)

2012年度デザイン総合プロジェクト(千葉大学)

2014年JIDビエンナーレ 全体講評

特別審査員
喜多 俊之(公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会 理事長)

JID賞ビエンナーレ2014は今年も多くの優秀な作品応募がありました。作品には、常に時代の背景が反映されていて、そ
れぞれのアイディアが繊細なディティールで表現されていました。ごく普通の街の一角が、一つのコンセプトで総合的に
まとめられたデザインによって一変してしまうという事例を示した「扇屋根旅館 扇屋カフェ」が大賞を受賞したのも今日
的な背景があったからだと考えられます。

また、「大阪木材仲買会館」という作品も伝統的な木材という素材を使っての空間で、近未来の方向を示す質の高い作品
でした。

特別審査員
松原 亨(株式会社マガジンハウス「Casa BRUTUS」 編集長)

大賞を受賞した「扇屋旅館」はパブリックなレベルで、インテリアスペース賞の「シキリの形」はパーソナルに、空間デザ
インの良いアイデアが、人間の生活に欠かすことのできない重大事であることを示していると思う。
質の高い暮らしには、質の高い空間が必要だ。そしてその「質」は金銭的な価値とは別の尺度であることもこの2作品は
示していると思う。おめでとうございます。

特別審査員
山田 節子(株式会社TWIN 代表、クリエイティブディレクター)

自然も、人の心も、崩れそうな、“今”。先鋭性や斬新さでは無く<地域の再生><空間の再生><生業の再生>と云う課
題に、身の丈に適った作品が選ばれ、爽やかな印象が残る審査会でした。とりわけ、大賞の「扇屋旅館・扇屋カフェ」は、
地方都市の駅前に位置し、暖簾をくぐると、市井の広場も兼ねる舞台の如き中庭・宿・宴席・カフェ・オーナーの住居の設
い。それが、健全に24時間稼働し、半年先まで宴席は予約満杯とのこと。多くの地域や人々に希望を送る力を感じ、拍
手を送りたい。

2014年JID賞 審査員

特別審査員

松原 亨 (株式会社マガジンハウス「Casa BRUTUS」 編集長)
山田 節子 (株式会社TWIN 代表、クリエイティブディレクター)
喜多俊之 [(社)日本インテリアデザイナー協会理事長

JID選考委員会

安藤  清( インテリアデザイナー、企画室A.N.D) 岩倉榮利 [岩倉榮利造形開発研究所 代表取締役]
川上玲子 [武蔵野美術大学客員教授]
小宮容一 [芦屋大学教授・アトリエK&K 主宰]
近藤康夫 [近藤康夫デザイン事務所]
清水忠男 [製品・環境デザイナー]
 瀬戸 昇( 株式会社エーディーコアディバイス、クリエイティブディレクター)
長岡貞夫 [長岡貞夫デザイン事務所]
米谷ひろし( TONERICO: INC.代表、多摩美術大学准教授)

2014年JID賞ビエンナーレ リーフレット

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