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2015年入賞作品

JID 賞 JID-AWARD 2015は、「しあわせのデザイン」をテーマに、2015年1月〜3月の間公式ウェブサイトで公募を行った。応募条件をクリアした143点を審査対象とし、ウェブ上に登録された資料に基づき第1次審査を、また、その通過作品について現地審査、現物審査を含む第2次審査を行い、さらにその通過作品について、ゲスト審査委員の参加を得た最終審査会にて審査した結果、大賞 1点、インテリアスペースデザイン部門賞3点、インテリアプロダクトデザイン部門賞1点、新たに設けられたNEXTAGE部門賞10点、入選4点が選出された。審査結果は、公式ウエブサイトにて発表するとともに、受賞作品展にてパネルや模型、現物による展示が行われる。

大賞 Grand Prix

KOIL 柏の葉オープンイノベーションラボ イノベーションフロア(千葉県柏市)

成瀬友梨・猪熊純(株式会社 成瀬・猪熊建築設計事務所)

[審査講評]
KOILの入居する新しいオフィス棟の周辺には、複数の大学、研究施設及び商業、住宅などが集積しており、KOILは、その地域特性を背景にベンチャービジネスなどを対象とした挑戦的オフィス空間を提供している。スペースだけをレンタルする従来型オフィスと比べ多くの仕掛けが用意されており、カフェ、工房、スタジオ、会議室等が配置されたパブリックスペースと多様なワーカーに対応するオープンオフィスで構成された全体は、豊かな選択性を持ち、機能性のみならず居心地のよさを提供している。また仕上を意図的に最後まで留保した壁面や天井、既成部品やローコスト素材で巧みに構成された家具・什器類などが、クオリティの高いデザインにまとめられ見ていても楽しい。利用者が主体的に展開して行く多様なプルグラムを反映できるよう考慮されたデザイン解決は、まさにしあわせな環境の創出であり、これからのオフィス空間の方向性を示唆した作品と言える。(近藤康夫)

インテリアスペース部門賞+ゲスト審査委員賞 Interior Space Prize

さやのもとクリニック

山﨑健太郎(株式会社 山﨑健太郎デザインワークショップ)

[審査講評]
故郷に戻られ、認知症と真に向き合う事を決めた女医さんと、限られた予算に対時
した設計者。その相互の人間性が実現させたクリニック。モダンな外観の病院のサ
インにはかつての街並みの煉瓦張りの門柱を。重ねて30mという待合室は、この
地域に自生した植栽の庭に面し、壁面側の本棚には、写真集や絵本が陳列されてい
る。効率が優先され、人の尊厳が軽んじられる社会状況の中で、潔い空間の誕生は
今年のテーマに相応しく思える。(山田節子)

佐賀市の歴史的地区の旧道と新道に挟まれた場所に建つ病院。認知症を主とした一
般診療所として建てられた。旧道に面した赤レンガの門柱から続く、建物の外壁、
内壁にも赤レンガタイルを使用し、その内壁に面して、待合いと地域に自生する木
々の庭が旧道と新道をつなぐように存在し、その壁には幼い子供の絵本からお年寄
りの生きた時代の本が続き、新道と旧道をつなぐような空間が存在していた。その
つなぐ空間にしあわせの空間が感じられた。(瀬戸 昇)

インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize

柱の杜(愛知県日進市)

間宮晨一千(株式会社 間宮晨一千デザインスタジオ)

[審査講評]
作品のねらいは現地審査により納得できた。木造建築による大きなワンルーム空間
に10人の設計所員のためのクリエイトの場が30本の長型修正剤の柱間に書籍・
見本帳の機能を持たせた間仕切りにより構成され、中央には所員一同のミーティン
グ・食事もあり、コミュニケーションが促進されている。さらに床の自由度により
天井高に変化ある多様なエリアが生まれ、四周からの外光も所員各人に創作意欲を
奮い立たせているようだった。(安藤 清)

ものづくり精神を伝承する建築 竹中大工道具館新館(兵庫県神戸市)

小幡剛也・須賀定邦・中西正佳(株式会社 竹中工務店)

[審査講評]
神戸・六甲山の麓の傾斜地に立地し、地上1階・地下2階の設計で、環境や修景へ
の配慮は良好である。1階は玄関、受付、多目的ホール等、ここから地下の展示ス
ペースへ中庭(光庭)を回転して降りる、展示スペースの動線も回転式で、動線は
スムーズである。中庭は地下2階まで、自然光を届けていて気持ちよい光環境を提
供している。ホール天井の杉の合掌垂木、中庭の版築左官壁他各所に和大工・和職
人の巧みな技が配され、設計家と職人のコラボレーションが良い成果をもたらして
いる。上質な建築・インテリアであると評価できる。(小宮容一)

インテリアプロダクト賞 Interior Product Prize

大工の手

小泉 誠(一般社団法人 わざわ座)

[審査講評]
現代生活におけるインテリアプロダクトは、通常、商品として完成されているもの
を購入するか、ホテル等施設の家具のようにインテリアデザイナーや建築家がデザ
インしたものを特注というやり方で具体化されるのだが、いずれの方式において
も、使い手と作り手が直接やり取りして出来上がるわけではない。「大工の手」は
、いわば昔ながらの生活の道具づくりの方式を現代的なものとするソフトの提案で
ある。使い手と作り手あってのプロダクトという基本をあらためて考えさせる点が
高く評価された。(岩倉榮利)

NEXTAGE部門賞 NEXTAGE Award

[審査講評]
今回から新たに設けられた「NEXTAGE部門」では、まだ製品化されていない試作による提案や施行されていない空間提案など挑戦的デザインが対象である。そこで、学生による演習課題制作や卒業制作としての作品の募集がほとんどであろうと予測していたところ、実務にたずさっているデザイナーたちからの応募も多く、全体としてレベルの高い作品が選ばれることになった。グループによる応募も散見され、互いに刺激し合い協働することによって、よりよいデザインを生み出していることにも、これからのデザインの可能性がかんじられた。(清水忠男)

ひとつぼキャビン

三輪良恵(ひとつぼキャビンプロジェクト)

Apple Stool

及川絵里

undulation shelf

山本達雄(有限会社 山本達雄デザイン)

Hospitality Chairs「待ち時間をしあわせにする椅子」ー製品デザインの教育現場からー

根来貴成(金沢美術工芸大学製品デザイン専攻根来研究室)

カクカクいたいた

小林さくら(九州産業大学芸術学部デザイン学科)

単の椅子の研究

岡田雅王

SWIT ー シーンに合わせてコミュニケーションとリラックスを切り替えられる椅子 ー

鈴木 僚(金沢美術工芸大学美術工芸学部デザイン科製品デザイン専攻)

たなばたけ

八田 興(千葉大学 植物環境デザイニングプログラム)

Magic Carpet

原田 圭(DO.DO.)

undulation high table

山本達雄(有限会社 山本達雄デザイン)

入選作品

ひきつぐ・うまれかわる・つながるシェアリーフ西船橋グレイスノート(千葉県船橋市)

志村美治・石津麻衣(株式会社 フィールドフォー・デザインオフィス)+ 伊藤秀明・小嶋秀隆(日本土地建物 株式会社)

VASILY(東京都渋谷区)

美和小織(LITTLE)

truffle—トリュフーサイドテーブル

原田 圭(DO.DO.)

AKAFUSA—ZA(国技館プレミアム枡席座布団)

寺原芳彦(寺原アトリエ/バイステップ)

2015 JID AWARD 全体講評

特別審査員
喜多 俊之(公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会 理事長)

日本インテリアデザイナー協会賞は、今年から隔年開催から、毎年開催されるよコンペティションとなりました。新しくなったこのJID賞には、141点もの応募がありました。その中から、対象となった作品「KOIL柏の葉オープンイノベーションラボ イノベーションフロア」は仕事空間が人とのコミュニケーションの場として捉えられたマルチ空間としてのコンセプトと、その構成が評価されたものです。他に、ゲスト審査委員賞「さたのもとクリニック」や、部門賞「柱の杜」に共通する新しい空間の提案が目立ちました。また、「竹中大工道具関新館」は、クオリティの高い素材と職人による仕事を日本の伝統的な表現を伝える空間にまとめられていました。その他、インテリアプルダクト部門においては、木材を中心とした作品「大工の手」が部門賞に選ばれました。また、ネクストエイジ部門には、これからの可能性に挑戦した作品10点が部門賞として選定されました。これからのJID賞の発展が期待されます。

ゲスト審査委員
石橋勝利(株式会社AXIS、AXIS編集長)

テーマは[しあわせのデザイン]。今ほど[しあわせ]の定義が難しい時代はありません。お前はしあわせなのか?と字自問しつつ固まってしまいます。ただ、間違いなく言えるのは、人々の多様な価値観を認める社会になってきたということではないでしょうか。今回のアワードでは、大賞となった「KOIL」を筆頭に、既成概念にとらわれない、さまざまな暮らし方・働き方を表現させるような機能を持つ、空間やプロダクトが数多く並んだと思います。

ゲスト審査委員
山田 節子(株式会社TWIN 代表、クリエイティブディレクター)

戦後70年、社会が抱えた様々な課題に、自然体で向き合う仕事が評価され、心地よい風を感じる審査会でありました。大賞の[KOIL柏の葉」は、気負わず、自由に若い芽を育てる、空間表現に。部門賞では、医療の空間を熟知した女医さんが、逼迫する病に手を差し伸べる「クリニック」の真髄に、等々。閉塞する時代の空気を溶かすために、空間デザインが果たせる役割が幾つも提示され、それぞれの場が、維持され育まれる社会をと念じます。

JID AWARD 2015 審査員

特別審査員

石橋 勝利 (株式会社AXIS、AXIS編集長)
山田 節子 (株式会社TWIN 代表、クリエイティブディレクター)

JID選考委員会

安藤 清 (インテリアデザイナー、企画室A.N.D)
岩倉榮利 (岩倉榮利造形開発研究所 代表取締役)
川上玲子 (テキスタイル&インテリアデザイナー)
喜多俊之 (公益社団法人日本インテリアデザイナー協会 理事長)
小宮容一 (芦屋大学名誉教授)
近藤康夫 (インテリアデザイナー)
清水忠男 (製品・環境デザイナー、選考委員会委員長)
瀬戸 昇 (株式会社エーディーコアディバイス クリエイティブディレクター)
米谷ひろし(TONERICO: INC.代表、多摩美術大学准教授)

JID AWARD 2015 レリーフレット

JID AWARD 2015 レリーフレット PDFファイル