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2012年入賞作品

2012年JID賞ビエンナーレの応募総数は143点、応募数が減少したのは東日本大震災の影響と思われる。

部門別ではスペース系が122点、プロダクト系が21点、研究・著作・業績系には応募が無かった。

スペース系は前回同様に優秀作品が多かったが、プロダクト系では受賞該当作品がなかったのは残念だった。

委員会では4回の予備審査とスペース系の現地審査を行い、最終審査には3名の特別審査員を迎え、投票と審議によって各賞を決定し、大賞には"デンタルプラザ福岡"が選ばれた。

尚、今回から最終審査に残った作品の中から入選作品を選ぶことなり、スペース系7作品が選定された。

大賞 Grand Prix

デンタルプラザ福岡

志村美治 井筒英理子 伊藤公美 石津麻衣(フィールドフォー・デザインオフィス)

[審査講評]
歯科医療器材の輸入商社としてスタートし、90年の歴史を持つメーカーのショールームである。
地方都市の郊外に設けられた事からも使用形態は歯科医療に携わる関係者を対象としており、
一般に開放されたスペースではなく外部からは認識できない。

高さ6mのメタルで構成されたVMDスペースを抜けると、
全ての物が漂白された白の世界に引き込まれる。
エキスパンドメタルのスクリーンにより、
ゆるやかに区切られた診療台展示スペースやミーティングスペースは
「ものだけ見えるショールーム」をはるかに超え、
さらにシームレスな空間構成ディティール、
照明デザインが浮遊感や無重力な世界を見事に演出している。

1964年に初めてデザインされた診療台のデザインが時代を超越しているように、
企業との絶妙なコラボレーションが極めて良質な空間を提供している。

インテリアスペース賞 Interior Space Prize

スクエア クラウド (Squared Cloud)

廣瀬大祐(ARCHICOMPLEX)

[審査講評]
海外生活の長いクライアントが設計者に依頼した際の最も重要なポイントは、
家族や訪れた人々との「和--つなぎ」だったという。

コンクリート造の現代風建築でありながら、
至る所に内部外部の通い合いが見られ、
内部空間も家具で仕切られると同時につながれ、
のびやかな空間イメージを作り出している。
家具選択や装飾や収納に見られる住み手のセンスが、
設計者の優れたデザイン力を引き出し、
住まいが住みこなされている。住み手と設計者の好ましい「和--つなぎ」の成果と言えるだろう。

TANADA ピースギャラリー

山中コ~ジ 山中悠嗣 山下麻子(GENETO)

(撮影:近藤泰岳)

[審査講評]
学校の先生であったご夫婦が退職を機会に長年住んだプレハブ住宅を改装して、
地域文化の発信となる建築・空間を作りたいとして実現したものである。
直線で構成された四角い白い外観の中に、
曲線で構成された三段の白い棚田と畦が違和感なく融合されて、
ユニークな纏まりである。

ギャラリーは単に、絵を展示するのみではなく、
演劇やコラボレーションなど自由に利用者のニーズに答えられるインテリアであり好例である。

日本ヒューレットパッカード 本社ビル(吹抜・エントランスエリア)

志村美治 代田哲也 石津麻衣(フィールドフォー・デザインオフィス)+新間英一(清水建設)

(撮影:上・中/後藤晃人・下/吉田誠)

[審査講評]
緑と水のある恵まれた立地のIT企業本社ビルである。
社員の約70%がモバイルワーカーといわれる「仕事のかたち」を反映させた
「オフィスのかたち」にふさわしいデザインである。
特に建物の中央の吹抜空間はワーカー移動の回廊機能をはたす動線のコアであり、
手摺を兼ねた杉のカウンターテーブルは「止まり木的集い空間」でもある。
また「テラスのリフレッシュ空間」や「掘り炬燵スタイルの会議空間」など
随所にユニークな仕掛があり、
これからの働きの場の在り方を示唆する魅力的なオフィスである。

入選作品

SIA豊洲プライムスクエア

代田哲也 福富まり子 赤澤知也(フィールドフォー・デザインオフィス)+ 牧住敏幸(清水建設)

KD-HOUSE

山中コ~ジ 山中悠嗣 山下麻子(GENETO)

セント・アレグリア

米谷ひろし(TONERICO:INC.)

知恩院 和順会館・参道整備

インテリアデザイン/小梶吉隆 塚本直子 + 建築設計/小椎尾龍介 松浦真樹(竹中工務店)

GDC御殿山

水原 宏 今井充彦(日建スペースデザイン)+鈴木智子 土井健史(大成建設)

豊洲キュービックガーデン

志村美治 代田哲也 藤原洋平(フィールドフォー・デザインオフィス)+ 鼻戸隆志(清水建設)

4℃ ZERO

米谷ひろし(TONERICO:INC.)

2012年JIDビエンナーレ 全体講評

特別審査員
勝井三雄[グラフィックデザイナー]

今回の大賞を受けた「デンタルプラザ福岡」は、
曲線を生かしたミニマムな心地よい空間にショールームの見事な間接照明の演出を際立たせたデザインに纏められている。
インテリアスペース賞の三点は、
住宅地に出現した小空間が地域社会に突然開かれた窓として、
施主の意図を見事に異空間へと変えるデザインの力をみせた「TANADAピースギャラリー」。
外資系の本社ビル、アクセントの強い多様な意図を施す住宅、
それぞれ異質な空間にデザイン賞として光りが当てられたことは、
多くの優秀な応募の中で、この受賞の意味を一層深めているように思う。

特別審査員
真部保良[日経BP社 日経アーキテクチュア編集長]

インテリアスペースの秀作が多く、高レベルの接戦でした。
このレベルになると、つくり手の力量だけで勝負をつけるのは難しく、
依頼主がその空間で展開しようとする活動自体の先進性、
あるいは合理性といった要素も欠かせないことがよくわかります。
上位の作品にはいずれも、依頼主のニーズを正面から受け止めたうえで、
最終的に彼らの期待をも上回るソリューションとして提供した、
との一貫した力強い物語が感じられました。
これが社会性のあるデザインということでしょう。

特別審査員
喜多俊之[JID理事長]

2011年度インテリアスペース部門における審査において、
多くの優秀な作品応募があり、
クオリティの高い日本の商業及び公共のインテリア活動を改めて確認することが出来ました。
応募作品の多くが、品質やアイデアにおいて世界でも一流の部類に入る作品です。
「デンタルプラザ福岡」、高度なデンタル製品の展示をまとめたスペースで
最終的にグランプリの選定となりました。
プロダクトデザイン部門の入賞作品の該当が無かったことは寂しい限りです。
次回に期待したいと思います。

2012年JID賞 審査員

特別審査員

勝井三雄 [グラフィックデザイナー]
真部保良 [日経BP社 日経アーキテクチュア編集長]
喜多俊之 [(社)日本インテリアデザイナー協会理事長

JID選考委員会

岩倉榮利 [岩倉榮利造形開発研究所 代表取締役]
川上信二 [フォルムSKR 代表]
川上玲子 [武蔵野美術大学客員教授]
木村戦太郎 [文化女子大学建築・インテリア学科教授
小宮容一 [芦屋大学教授・アトリエK&K 主宰]
近藤康夫 [近藤康夫デザイン事務所]
清水忠男 [製品・環境デザイナー]
長岡貞夫 [長岡貞夫デザイン事務所]