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2008年入賞作品

2008年JID賞ビエンナーレの応募総数は187点、前回の応募率を上回った。

部門別ではスペース系が147点でプロダクト系の4倍を超え、優秀作品が多く選考に苦心した。

委員会では4回の予備審査とスペース系の現地審査を行い、最終審査には4名の特別審査員を迎え、投票と審議によって各賞を決定した。大賞には"錦綾幼稚園"が異論なく選ばれた。

大賞 Grand Prix

錦綾幼稚園

小笠原絵理 間工作舎

(撮影:Yoshiharu Matsumura)

[審査講評]
閑静な住宅街に建つ延床面積880平方メートル・園児数200名の大型幼稚園。
RCの箱体の上に鋭角的な鉄屋根がガラスを介して浮くモダンな造形は、
周囲との適度な対比を見せる。
室内は建築構造を活かして天井に高低をつけ、
ガラス越しの景色も楽しい。
内装に木材を多用し、
木枝の引手や外廊下などに園児への配慮が見てとれ、
施主と設計者の努力と協力が感じられる。

インテリアスペース賞 Interior Space Prize

菓匠 桔梗屋

米谷ひろし 君塚 賢 TONERICO:INC.

(撮影:Satoshi Asakawa)

[審査講評]
シンプルな外観でありながら、人目を引き、
印象的なファサードデザインは見事である。
内部も白い漆喰仕上の単純な形体の空間であるが、
光源を隠した、明るいながら陰影を持つ美しく気持ち良い空気を作り出し、
軽やかな緊張感をかもし出している。

クローバーハウス

宮本佳明 宮本佳明建築設計事務所

[審査講評]
六甲山地に造成された段上の用地、その地盤と擁壁を大胆にくり抜いてはめ込まれた鉄板壁は、下層に美しいクローバー形の家族の共有空間をもたらし、そのまま吹き抜けとして立ち上り上層の空間を仕切る。いわゆる快適な住まいとは言い難いが、男親と男の子2人という家族にユニークな生活空間を提案している。

MARUHON 探すプロセスを楽しむ

志村美治 井筒英理子 フィールドフォー・デザインオフィス

(撮影:Satoshi Asakawa)

[審査講評]
空間のイメージが、
そこに用いられている膨大な樹種サンプルに負っていることを割り引いても、
タイトル通りに気持ちよく楽しく樹種探索のときを過ごせる質の高い空間となっている。

インテリアプロダクト賞 Interior Product Prize

[WHY NOT? ]の家具 BALLOON

矢萩喜從郎

[審査講評]
熱気球を連想した独創的なプライウッドの背が
紙を曲げたようなイメージで空気を覆っているようである。
台のような座と曲げた紙のような背板とのジョイント技術が
軽やかで美しいデザインである。

MEMENTO by Cassina ixc.

米谷ひろし 増子由美 TONERICO:INC.

(撮影:Nacasa and Partners)

[審査講評]
カッシーナの説明を待つまでもなく、
ミラノ・サローネ2005年に出品された作品の製品化である。
字体の重ね表現は今までも試みられてはいるが、
この作品の場合はグラフィック的な表現を越えて、
フロアスタンドとしての新たな魅力と価値観とを生み出している。

CELL

増子由美 TONERICO:INC.

Manufactured by
HIBIYA-KADAN CO., LTD

[審査講評]
新しい技術・技法を用い、
本来のフラワーベースとしての目的もさることながら、
さまざまな利用方法や可能性を秘めた広がりのあるプロダクトである、
と同時にデザインに求められている美しく楽しい形状を備えている。

インテリア研究・著作・業績賞 Acknowledged Achievement

「大槻圭子の世界-Li'Tya」

大槻圭子

(撮影:ASAKI)

[審査講評]
作品集「大槻圭子の世界 Li'Tya」は
透明感のある色彩と簡潔なフォルムでタピストリーを中心に制作してきた
大槻さんの集大成である。
作品は美術館、テーマ館、公共建築に収蔵されている。
今回のJID賞は長年の業績(とくに染色の創造的技法に対する挑戦)と
作品集の編集ディレクションに対する評価である。

佳作 インテリアスペース部門  Acknowledged as a Fine Work

AGCモノづくり研修センター

山口広嗣  宮下信顕 田中誓子 株式会社竹中工務店

(撮影:左 SHINKENCHIKU-SHA 右 Taisuke OgawaI)

[審査講評]
すべてをローコストに仕上げていながら、
チープさをまったく感じさせない。
デザインはお金をかければ良いものが生まれるというわけではなく、
ローコストでもしっかりした計画があればデザインの力で、
隅々まで気配りのある優れたインテリアが構成できるひとつの例である。

2012年JIDビエンナーレ 全体講評

特別審査員
川崎健二[デザインアソシエーション 理事長]

JIDが平成20年度に創立50周年を迎えるとの事、長く継続的な活動に対して深く敬意を払います。
デザインアソシエーションは、日本のデザイン輸出を一つのテーマに掲げ活動しています。
今回、私は世界を意識して作品を選びました。
その中でトネリコの力強さが目立ちました。
ただ、世界に通用するデザイナーを輩出する為にはプロデューサーの育成が急務と感じています。
この課題にともに今後取り組んでいく必要があると考えます。

特別審査員
隈 研吾[建築家]

抽象化を超えた何かを、人々が求め始めている。
かつて、インテリアデザインとは、抽象化の競争であった。
しかし、今では抽象化はだれでも達成できるハードルであり、その先の生活に対する想像力と、それにもとづく実際の働きかけ、アクションが求められている。
たとえば錦綾幼稚園のような。

川床 優[ユニバーサルデザイン誌 編集長]

奔放でのびのびとした作品が数多く見られた。
「健やかさ」はデザインにとって最も重要な要素の一つだ。
閉塞した時代だからこそ、自由で爽快なデザインが求められ、世相の暗さ故に開放感あふれる清明さが望まれる。
苦渋に満ちた社会に光明をもたらすというデザインの使命を、多くの表現の中に確認することができた。

川上玲子[(社)日本インテリアデザイナー協会 理事長]

これからの日本を託さなければならない子供の教育のための空間が大賞に値する作品であったことは、
喜ばしい結果だと思います。
賞を逸した作品の中には、世界に発信できる素晴らしい感性を持ったものもありました。
日本人のDNAが世界に影響を与えるという予感を感じます。

2006年JID賞 審査員

特別審査員

川崎健二 [デザインアソシエーション 理事長]
川床 優 [ユニバーサルデザイン誌 編集長]
隈 研吾 [隈研吾建築都市設計事務所]
川上玲子 [(社)日本インテリアデザイナー協会理事長]

JID選考委員会

秋山修治 [a Design Associate]
泉 修二 [泉デザイン事務所]
岩倉榮利 [岩倉榮利造形開発研究所代表]
大野美代子 [エムアンドエム デザイン事務所]
木村戦太郎 [文化女子大学造形学部住環境学科教授]
吉良ヒロノブ [吉良+DOデザイン研究室]
清水忠男 [千葉大学工学部デザイン工学科教授]
長岡貞夫 [長岡貞夫デザイン事務所]