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2016年入賞作品

JID 賞 JID AWARD 2016は、「あたらしい日常」をテーマに、2016年1月〜3月の間公式ウェブサイトで公募を行った。応募条件をクリアした134点を審査対象とし、ウェブ上に登録された資料に基づき第1次審査を、また、その通過作品について現地審査、現物審査を含む第2次審査を行い、さらにその通過作品について、ゲスト審査委員の参加を得た最3点、NEXTAGE部門賞10点、入選5点が選出された。審査結果は、公式ウエブサイトにて発表するとともに、受賞作品展にてパネルや模型、現物による展示が行われる。

大賞 Grand Prix

富久千代酒造 酒蔵改修ギャラリー

平瀬 有人・平瀬 祐子(株式会社 yHa architects )

[審査講評]
佐賀県鹿島市にある有形文化財の旧精米所(1921 年)を来訪者の 試飲や酒造り展示のできる酒蔵ギャラリーに改修したものである。空間内部の デザイン方法としては、古民家改修によく見られるような柱梁の接合部を補強 する方法ではなく、12mm 厚の黒皮鉄板の壁をつくり、4.5mm 厚のリブ枠材 を取り付け、四合瓶を展示する什器となるように仕上げているところが大変珍 しく、爽やかに感じられた。設計者がここで鉄板を用いたのは、黒皮鉄板にも 土壁の持つエイジングと同質の錆びゆく美学があると感じたからとのこと。ま た、ギャラリー内部の展示物を観る楽しみと正方形の孔を通じてこの建築をみ るという複数の視点を同時に得ることもまたこの計画の重要なテーマのひとつ であったと云う。空間全体の “ 間 ” の気持ち良さ、リズム感の良さ、そして土 壁や錆び鉄などマテリアルの使用に見られるセンスの良さなどがクオリティー の高い作品を作り上げており、高く評価された。(岩倉榮利)

インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize

L×4

川島 茂(鹿児島県立短期大学) 鈴鹿 美穂 ・佐々木 亜美・西脇 梓 ( 川島鈴鹿建築計画 )

[審査講評]
東京の下町情緒豊かな商店街で 3 代続く天麩羅 屋とその家族の住居である。 1 階店舗部分は、従来の営業 形態を保ちながら間口を広く確保するため L ア ングルを 4 本束ねた柱を採用。この構造は1F店舗に広さと個性を生 み出し、 さらに 2、3 階の住居部分を細長いながらも開放的な空間としている。異質に も視える店舗と心地良さが観ただけでも伝わる住居部分のデザイン、そして二 つの顔を持つファサードによる街との関係は、作者の意図である適度な距離感 の確保につながり、「あたらしい日常」を生み出している。またオーナーの手 作りによる家具やメニュー等の質の高さもあって、この作品がデザイナーの力 量に加えオーナーとの幸せな巡り合わせにより出来上がっている事を感じさせ る。( 近藤康夫 )

インテリアスペース部門賞 Interior Space Prize

まるほん旅館 風呂小屋

久保 秀朗・都島 有美 (株式会社 久保都島建築設計事務所)

[審査講評]
400年つづく老舗旅館の風呂小屋の建替えである。1階浴室と2階の湯上り処 が局面スラブで分けられ、その形状から浴室では空気の自然な流れを作り、湯 上り処では局面スラブが背もたれとなって、眺望を楽しめる仕掛けとなってい る。空気の流れや背もたれとしてのすわり心地など綿密に計算された形状が豊 かな快適性とともに大胆 で大変美しい空間を作り出している。( 木辺智子 )

BAO BAO ISSEY MIYAKE 銀座

平綿 久晃・渡部 智宏 (株式会社 モーメント)

[審査講評]
百貨店1階の外部に面する半独立店舗である。そして世界的に、あまりにも有 名なプロダクトを展開するブランドである。「シンプルなピースが集まって思 いがけないものになる。偶然性が生み出すかたちと機能が毎日を楽しくする。」 といったブランドコンセプトからインスパイアされた「素材からのデザイン」 がプロダクトと見事に呼応している。空間構成はシンプルながら、ブランドの 根幹に迫る、素材への追求が高く評価された。大きさばかりにスケールメリッ トがあるのではなく、小さなスケールメリットを利用した手業による偶然性は、 空間に心地よい緊張感と密度を与え、今の時代感からくる脱力系、自然体の対 局に位置しており際立っている。(米谷ひろし)

インテリアプロダクト賞 Interior Product Prize

エノッツミニマルチェア

橋田 規子 (NORIKO HASHIDA DESIGN)

[審査講評]
「ミニマルチェア」の名称が表すように、背の付いた小振りのスツールといっ た感覚にまとまっている。 座面はチェアと思って座ると小さく感じるが、スツ ールと思えば納得できる。背のサポートは程よく、全体のプロポーションもバ ランスが取れている。スタッキングのディテールも良い。4色の商品揃えは、 ユーザーが4色を買って使用するといった、今日的インテリアデザイン手法に 応えられている。自重 2.1Kg の軽さは、素材とフォルムデザインの成果とし て評価できる。この軽さも含め、様々の生活シーンに対応できるチェアとして、 今回のAWARDのテーマ「あたらしい日常」を感じさせ、部門賞に選ばれた。(小宮容一

インテリアプロダクト賞 Interior Product Prize

Aluminum Honeycomb hybrid Furniture WING-2

黒河 優子・黒河 雅行 (有限会社 黒河デザインプロダクツ)

[審査講評]
長年、アルミハニカムパネルを用いてユニークなノックダウン方式の家具を追求 してこられた成果である。木製では不可能な薄さと強度を持つ部材を組み合わせ た軽快で美しいフォルム。最先端の技術を用いた極めて現代的な家具でありなが ら、漆を思わせる塗装が施されていることもあり、和風も感じさせる。どこに置 こうかと想像をめぐらす楽しさもありそうだ。「現代の住居に非日常的の空間を 創出し、新たな<ハレ>を創り出す家具としての提案」というデザイナーのねらい は、成功していると云えるだろう。今回のAWARDの「あたらしい日常」というテー マにも適合しており、優れたインテリアプロダクトとして評価された。(安藤 清)

インテリアプロダクト賞 Interior Product Prize

Sunnyhills pop-up shop

富永 大毅・藤間 弥恵 (富永大毅建築都市計画事務所)

[審査講評]
催事場の什器としてデザインされたこのユニットには不思議な面白さを感じる。 ユニットの組み合わせ方によっては不安定な危険性が見え隠れする。しかし実物 を見るとそれは危なげなく面白さに繋がっていると言って良い。複雑な五角形の ユニットのデザイン其の物より、それが利用される空間や目的によってユニット の組み合わせ効果と面白さが発揮されると思う。使い手の感性を要求するデザイ ンである。ロシアンバーチの素材を選んだことも強度と美しさの面で良かったの ではない だろうか(川上玲子)

NEXTAGE部門賞 NEXTAGE Award

[審査講評]
まだ施工や製品化がなされていない提案デザインを対象にしたこの部門には、前回より多くの作品が寄せられ、いずれも挑戦的な姿勢で、デザインのレベルも高く、審査をしていても楽しかった。また、中には障がいを持つ人や災害を被った人々のための提案もあり、デザイナーの意識の高さがうかがえる。学生による提案作品が多いと思っていたのだが,最終審査終了後、入賞者には学生だけでなく、プロのデザイナーも少なくないことがわかった。嬉しく頼もしい状況と云えるだろう。(清水忠男)

部門賞+五十嵐久枝賞
interior cell アルゴリズムを用いたインテリアマテリアルのデザイン

薄上 鉱太郎

 部門賞+石橋勝利賞
BRECHT 001

山下 麻子・山中 コ~ジ・山中 悠嗣 ( pivoto )

 部門賞
表面張力による水膜

清水 孝一

solaris

織笠 琢

すむいえ-応急復興住宅

田中 明香音

たわむ、つくえ

堀場 絵吏・成子 夏芽・谷 清鳳・泊 舞香・仲津 佑哉 佐藤 優子・岩政 音緒・平野 絢 ( 建築研究会 )

Table Palette

前野 慧・ 原地 千尋

Switch

山本 達雄 (有限会社山本達雄デザイン)

MIRAGE CUBE

西 毅徳

美術館のための電動車椅子

鈴木 僚

入選作品

あまねの杜保育園

相坂 研介 (相坂研介設計アトリエ)

数研出版関西本社ビル

有田 博・吉田 直弘 (株式会社 竹中工務店)

生活から生まれる形

中園 美博・張替 那麻 (株式会社 twha)

me ISSEY MIYAKE 玉川

平綿 久晃・渡部 智宏 (株式会社モーメント)

西武池袋本店プレステージゾーン

平綿 久晃・渡部 智宏 (株式会社モーメント)

2016 JID AWARD 全体講評

ゲスト審査委員

五十嵐 久枝(IGARASHI DESIGN STUDIO 代表、武蔵野美術大学教授)

最終審査会は、今回のテーマ「あたらしい日常」と作品の関連性に ついて活発に議論する審査会であった。NEXTAGE では、多くを占め るプロダクトのなかに、形素材の特徴だけでなく、セルフビルドや コミュニケーション重視した独自の視点をもつプロダクトの提案が 見られた。大賞の選出は、リノベーションのデザイン性について熱 い議論が交わされ、今後も注目していきたい。インテリアスペース 部門には優れた作品が多く、受賞数を増やすことに異議はなく、充 実した内容となったように思う。

ゲスト審査委員

石橋 勝利(株式会社AXIS、AXIS編集長)

すべてを一新するのではなく、“ 古き良き ” を残しつつ、過去から現 在につながる線を未来へと、さらに心地よく伸ばしていく。単純な リノベーションではなく、革新的な技術を採用しているわけでもな いけれど、新しさを感じる。そして、目の前の壁を超えるためのア イデアには潔さと爽やかさを感じる。それが現代における「新しい 日常」でしょうか。今回評価の高かった作品には、そんな新しい日 常を体現したものが多かったと思います。

JID 理事長 池田 和修

「あたらしい日常」をテーマに、様々な挑戦的作品の応募があり、ど れもが力作で優劣つけがたく審査が難航した。インテリアスペース 部門、インテリアプロダクト部門ともに、素材感・システム化等に こだわった、商空間にかかわる作品が多く含まれていたことが印象 的であった。NEXTAGE 部門の最終審査対象は、いずれも際立ってユ ニークな発想による作品で、次の時代を担うデザイナー達の今後の 活躍が大いに期待される。

JID AWARD 2016 審査員

ゲスト審査員

五十嵐 久枝 (IGARASHI DESIGN STUDIO 代表、武蔵野美術大学教授)
石橋 勝利 (株式会社AXIS、AXIS編集長)

JID選考委員会

安藤 清 (インテリアデザイナー、企画室A.N.D)
岩倉榮利 (岩倉榮利造形開発研究所 代表取締役)
川上玲子 (テキスタイル&インテリアデザイナー)
木辺智子 (インテリアデザイナー、株式会社フォーラム 取締役)
小宮容一 (芦屋大学名誉教授)
近藤康夫 (インテリアデザイナー)
清水忠男 (製品・環境デザイナー、選考委員会委員長)
米谷ひろし(TONERICO: INC.代表、多摩美術大学准教授)

JID AWARD 2016 レリーフレット

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